デジタル雅号印【落款をデジタルで作成する方法】書体・雅号決め方

【デジタル雅号印】 落款をデジタルで作成する方法!書体・雅号決め方

前回、水墨画風に仕上げたデジタルの龍に付ける雅号印(落款)を作成しました。

▼こちらの印鑑が雅号印です。

デジタル雅号印を作成

水墨画や書道などによく見られるものですね。実はこちら本物の印鑑を作って押したわけではなく、デジタルで作り上げました。使用した環境はWindowsで、ソフトは多機能な画像編集ソフトGIMP2です。

雅号とは画家、書家、作家が作品を作る時に使用する風雅な名前。今で言うところのニックネームです。
今回大きく3つの流れで作成していきます。

  1. 雅号(ニックネーム)を決める
  2. 書体を決める(フリーフォントでOK)
  3. GIMP2で雅号を作る
目次

落款をデジタルで作成する方法

作品が完成したら落款を作成します。落款とは「和」という感じの印鑑を言います。
「落款=作品」の完成を意味します。つまり落款も作品の一部なのです。

といっても落款印を持っているわけではないのでそれならパソコンで作成してしまおうという事です。

落成款識 / らくせいかんし

落成款識、略して落款 (らっかん)。書物が完成した証としてその作者の姓名、雅号 (がごう) などを署名として記すものです。

  • 篆刻 (てんこく)
  • 篆刻印
  • 篆書

雅号 / がごう

日本庭園 ししおどし写真 - 雅号 / がごう

雅号とは画家、書家、作家が作品を作る時に使用する風雅な名前です。本名を使用する場合もあります。

書道家などは何年も修行を積んで師匠から一文字もらい受けるという風習などが存在するようですし、雅号といった言葉の響きから重々しい感じがしますが、古くからある今で言うところのペンネームのようなものです。

本来雅号は基本自由に付けて良いというものです。というのも明治3年に平民苗字許可令 /へいみんみょうじきょかれい (明治8年に義務化) が出されて日本人が公に名字を名乗れるようになるまでは日本には仮名 (けみょうの) といって複数の名を持つという文化がありました。ですからその影響もあるかもしれません。
江戸時代やそれ以前は諱といわれる本名は名乗ることなく通称名を使うのが一般的でした。わかりやすい例だと夏目漱石は雅号なのだそう。またそのような著名な人物でなくても明治時代は雅号を名乗る人が一般的に流行ったそうです。

雅号の付け方

前置きが長くなってしまいましたが雅号はいわば古くから存在するペンネーム/ニックネームのようなもので複数持って名乗るのも自由なのです。

筆者はイラストを専門でやっているわけではないですがそういうことで今回自分の雅号をつけてみようかと。

といっても、いざ付けるとなると何にしたらいいか迷います。落款にした時の見栄えなのか雅号は漢字で2文字が多い気がします。

▼一応雅号を決める時の目安をざっと見てみましょう。

  • 本名からとる
  • 趣味からとる
  • 自分自身の見た目から
  • 出身地からとる
  • 現住所からとる
  • 思いつき
  • 師匠から一文字頂く

これらをまとめると結局は自由だということになりますね。
といっても漢字で風雅な名前となるとなかなか思いつきません。

雅号は雨春にしました。読みは、うしゅんです。

朱文と白文

落款を雅号にするか本名にするか、雅号であればその雅号の名前を決めたら次は朱文 (しゅぶん) にするか白文 (はくぶん) にするかです。

朱文が文字の部分に色が付いている印鑑、白文が文字の部分が彫ってある印鑑です。決めるといっても雅号を使用する場合は朱文、本名を使用する場合は白文にするのが一般的なようです。

また雅号を決めていなくてない場合は本名で朱文にしても問題ありません。

「基礎をざっくり」書体を決める

古文 写真 - 「基礎をざっくり」書体を決める

「雅号が決まった」「朱文にする」と落款印を作成するための材料が揃ってきました。最後に決めるのは書体です。印鑑の書体って様々な種類がありますよね?これを決めるわけです。

書体については印鑑屋さんのHPを見ると詳しく記載されている事が多いようです。雅号で落款するための印はそのまま雅号印 (がごういん/朱文) 、または雅印 (がいん) と言います。

篆書体 / てんしょたい

漢字の書体のうちの1つ。分類的には古代文字となり、かなり歴史が古く紀元前には使われていました。秦の時代に始皇帝 (紀元前246年即位) が統一した文字です。

日本最古の印で国宝に指定されている「漢委奴国王 (かんのわのなのこくおういん)」は篆書体で作られています。身近な所だと日本円の印鑑が篆書体となるようです。

とりあえず他の書体も見てみましょう。漢字の書体には歴史の古い順から

「甲骨文字/金文 (きんぶん)」→「篆書 (てんしょ)」→「隷書 (れいしょ)」「行書 (ぎょうしょ)」「草書 (そうしょ)」「楷書 (かいしょ)」とあります。「古印体 (こいんたい)」も使用される場合がありますね。
「楷書体」は現代でも使用される漢字の書体の一つです。「楷書体」「篆書体」意外の書体もざっとですが見ていきましょう。

甲骨文字 / こうこつもじ

現在確認されている最古の漢字で殷王朝 / いんおうちょう (紀元前1700年頃~紀元前1100年頃) の時代の中で使用されていたとされる。亀甲や獣骨に文字として記されているのが1899年に発見されました。

その時代には日常のありとあらゆる事柄を占いによって決められていました。そういった場面で多く使用されていたとされます。

それまでは殷王朝は伝説の古代王朝とされていたが甲骨文字に記されている内容により考古学的にその存在が証明される事となりました。漢字の起源ですね。

金文 / きんぶん

甲骨文字の次、殷王朝、周王朝~秦漢時代 (紀元前1300年頃~紀元前250年頃) に使用されていたとされる書体です。
銅や青銅に記されていていた事から金文と呼びます。

隷書体 / れいしょたい

漢字の書体のうちの一つで八分、分書とも呼ばれています。篆書体から変化した書体で一見何を書いているのかわからない篆書体と比べると現在の漢字の形にやや近づいた書体と言えます。

行書体 / ぎょうしょたい

隷書を崩した文字です。

草書体 / そうしょたい

行書体をさらに崩した文字です。

古印体 / こいんたい

隷書体を元に日本で独自に進化した書体です。奈良時代の寺社印であったため当時の技術を再現すると現代でも古印体はこのような波打っている字になるようです。

日本ではこのように一般的にホラー作品で使用されることが多い書体として有名です。

古印体 / こいんたい - イメージ画像

落款の位置

書道の落款位置を調べてみるとだいたい決まっているようですが、画像検索して水墨画の作品を色々みると特に決まった位置はないような気がします。
落款の大きさは作品が大きかったら大きい落款、小さかったら小さい落款。大胆な構図の作品だったら大きい落款、繊細な作品だったら小さい落款と使い分けるのが一般的なようです。

作品のイメージによって使い分けるものになります。

「デジタル」雅号印を作成する

それでは基礎知識はこの位にしておいて、いよいよデジタルで雅号印を作っていきます。デジタル雅号印です。

まずは書体ですね。白舟書体(はくしゅうしょたい)がフリー・商用可で配布されています。完全無料ですし書体が豊富なのでおすすめです。

なお白舟書体は一般的な商用用途は可能という素材ですが、配布などその他の用途での使用を考えている場合は白舟書体ライセンスをしっかりとご確認下さい。

▼書体は「白舟書体」よりダウンロードしました。篆書体、古印体、草書体とあるので3つともインストールしました。

白舟書体(はくしゅうしょたい) -「デジタル」雅号印を作成する

▼実際どのような表記になるか比較してみました。収録されているのが教育漢字1006文字
。それ以外の文字は製品版(有料)ですが、普通に使う分には無料の範囲内で充分かと。

白舟書体(はくしゅうしょたい)- 篆書体、古印体、草書体の比較

雅号印を作るといっても作ったことがないのでネットの画像検索で水墨画や雅号印というワードで調べて拡大したりしてよく検証しました。縦書き、横書きと特に決まってはいないようなので両方作って比較してみました。

▼書体が出来上がっているので赤系の色を付けるだけでそれらしくなります。

白舟書体(はくしゅうしょたい)- 篆書体、古印体、草書体 - 色をつける

比較してみて、一番しっくりくる草書体(そうしょたい)でデジタル雅号印を作ることにしました。

仕上げ

デフォルトの書体の文字列のままだと2文字を入れる場合長方形になってしまいます。水墨画などの雅号印を見るとだいたい正四角形に近い四角形になっているので、まずこれを調整します。

草書体(そうしょたい)- 調整

ここに枠を入れて印鑑っぽさが出るように文字・枠それぞれに実際の印にの印象に近づけるためにフィルターを付けます。不透明度も落とします。

草書体(そうしょたい)- 仕上げ

次に仕上げとして白の背景部分を全て切り抜きます。

▼これで、雅号印の完成です。

草書体(そうしょたい)- 完成

あとは水墨画風で描いたデジタル龍に完成の印としてこのデジタル雅号印を入れます。
「これで完成」全てデジタルで仕上げました。

水墨画風のデジタル龍にデジタル雅号印を入れる

アナログで龍の下書き」「デジタルで水墨画風に色付け」、そして今回と3記事に渡ってまとめました。

描いたイラストはpixivやdeviantARTに投稿することができます。

まとめ

出来上がってから見るとここをもう少しこうしたら.. という部分がありますがはじめて描いた龍なのでこんな感じかもしれません。

龍は鱗とか結構面倒な箇所があり途中で挫折しそうでした。今回の龍は結構前に出来ていましたがなぜか手が進まなくなってしまって、龍はしばらくは描かなくていいかなという感じです。

今回の記事は3記事目の後半です。
アナログで龍の下書き」「デジタルで水墨画風に色付け」、そして今回と3記事に渡ってまとめました。
また、堂々とした書体が特徴的なおすすめ毛筆フォントを紹介した記事もあります、そちらは全て商用利用可能なフリーフォントですので安心してご利用できます。

少しでも興味がありましたら、良かったら合わせてご覧ください。

Web犬タロウ

最後までありがとうございました、ワンワン!

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